タケイブログ

ほぼ年1更新ブログ。

『素晴らしい一日』

素晴らしい一日
http://www.cinemart.co.jp/subarashii/

貸した金を返してもらうために、元カレと一日行動をともにするはめになった女性の物語。平安寿子の短編小説をイ・ユンギが映画化した本作は、さながら大都市ソウルを舞台にしたロードムービーといえよう。

 何より返済を迫る女ヒス(チョン・ドヨン)の表情がいい。やや日本人に近い顔立ちで、やや深津絵里に雰囲気が似ているように思う。しかしここでは常に眉間にしわを寄せた不機嫌面。けど健気な感じもあってそこがまた可愛らしい。
 次の転職先を探しているヒスは、仕事ではそれなりにヤリ手なのかもしれないが、メイクと服装から見るに女子力はそう高くなさそう。お金もないからプチどん詰まり中。そんなもんだから彼女は大半の場面で、チュにキツく迫るか、窓を見遣るかうつむくかしている。でもチュが肩をこづいた瞬間に笑みがこぼれたりするから油断ならない。

 元カレのチュ(ハ・ジョンウ)はヒスの請求をのらりくらりとはぐらかそうとするも逃げられぬとわかるや一転して、「大丈夫、金は返す」という。しかし向かった先は別の女の所。借金返済のために世話をなっている女達の元を訪れてお金を借りにいく。ハ・ジョンウは『チェイサー』ではシリアルキラーを演じているが、そんなことは微塵も感じさせないくらい、いいかげんでだめだめなキャラを演じている。
チュの口からはぽんぽん調子の良い言葉が出てきて、それでいてどれも嘘ではないというのも面白い。チュの誠実さをさりげなく演技にこめている辺りがうまいなあと思う。

甲斐性なしで調子の良い自由人。しかし時折、苦労の影が垣間見える。女達はそんなチュの性格を容認しており、そしてヒスもまたチュのそういう所に呆れつつも惹かれている。
「いつかスペインでマッコリバーを開きたい」
 チュはそんなささやか夢を語る。昔と変わらない彼をヒスは縛ることはできない。最後に遠くからチュの姿を見つめるヒスの表情は、どこか懐かしげでもあり、寂しげでもある。
本作の英語タイトルは「MY DEAR ENEMY」。邦題よりも本作の内容にふさわしい。

 作品そのものは常にさばさばとした雰囲気で進み、感情過多な部分は皆無である。しかしカメラワークには凝っていて、見飽きさせない。ジャズのBGMがとても洒落ている。

 当たり障りがなくて、わざわざ観に行く動機を見いだせる作品でもないのだけれど、見て良かったと思える良作だった。


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前回の日記で「続きは次回」といっていたけど、まとまらんかったとのでとりあえず保留です。

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