タケイブログ

ほぼ年1更新ブログ。

映画

【※追記訂正あり】デヴィッド・F・サンドバーグ監督『シャザム!』短評

SHAZAM! | Official Teaser Trailer | DC Kids 大人の姿をしたスーパーヒーローになる力を得たビリーと、里親の下で共に暮らすその友人フレディ。スーパーパワーに沸き立つ彼らのはしゃぎぶりがほほ笑ましく、どこか懐かしいのは、映画のスターやヒーローに…

【ネタバレあり】「絆」に繋がれた日本のグロテスクな似姿――ジョーダン・ピール監督『Us/アス』評

『Us/アス』の成功と映画作家ジョーダン・ピールの躍進 監督デビュー作『ゲット・アウト(2017)』で低予算のオリジナル作品ながら大ヒットを飛ばし、アカデミー脚本賞を受賞したジョーダン・ピール。現在アメリカで公開中の彼の最新作『Us/アス』が前作以上…

挑戦者を見届ける視点――Jimmy Chin&Elizabeth Chai Vasarhelyi『Free Solo』評

体を張った撮影が生み出すスペクタクル 命綱や安全具を一切身に着けずに行うクライミング「フリーソロ」。その無謀にも思える挑戦を続けるクライマーのアレックス・オノルドを追ったドキュメンタリー。 本ドキュメンタリーでアレックスが挑むのは、カリフォ…

2018年鑑賞映画総括

皆様いかがお過ごしでしょうか。年一更新ブログです。2018年は何と言ってもMCU危機の年、サノス猛襲、ジェームズ・ガン降板、スタン・リー逝去、さらには若おかみの正体はヴェノム等々、何かと話題に事欠かない一年でした。そんなインターネットの盛り上がり…

不名誉な笑い声とアメフトボール――ジェームズ・フランコ『ザ・ディザスター・アーティスト』評

若きグレッグが演劇学校で出会ったのは、大胆な演技と妙なアクセントが異彩を放つトミー・ウィソー。意気投合した二人はLAへと飛び出し共に俳優の道を志す。悪名高きカルト映画『ザ・ルーム』の舞台裏を描く本作は、笑いと気まずさ、一抹の悲哀が入り混じ…

2017年鑑賞映画総括

どうも年1更新ブログです。皆様2017年いかがでしたか。 今年もやります。毎年恒例映画ベスト記事ですよ。過去分はこちら↓ 2016年映画鑑賞総括 - タケイブログ 2015年鑑賞映画総括 - タケイブログ 2014年鑑賞映画総括 - タケイブログ 2013年鑑賞映画総括 - タ…

2016年映画鑑賞総括

邦画の話題作が多かった2016年。諸事情により残念ながらその波に乗れませんでした。でもやりますよ、今年の映画ベスト発表です。過去分はこちら↓2015年鑑賞映画総括 - タケイブログ 2014年鑑賞映画総括 - タケイブログ 2013年鑑賞映画総括 - タケイブログ 20…

Movie Review - 'Freeze, Die, Come to Life!(動くな、死ね、蘇れ!)' : Running past your childhood.

Hi, everyone. What if you can go back to your childhood? Do you go back? Today I'll talk about the greatest film I've ever seen, "Freeze, Die, Come to Life!"The film is a story about Valerka, a 12-year-old boy who lives in a desolate coal …

Movie Review - 'Whiplash(セッション)' : the most extreme form of "a duel"

Hi! My name is Takei Hironori. Today I'll talk about my favorite movie of 2014, "Whiplash.""Whiplash" is a story about a music school student. He beats drums, and his teacher beats him. That's the whole movie. Some people focus on the musi…

課題解決、メッセージ、契約――『オデッセイ』にまつわる私信

火星調査ミッションに就いていたマーク・ワトニー(マット・デイモン)は その途中で事故に遭い、たった一人火星に取り残されてしまう。九死に一生を得たものの、次の宇宙船が来るのは4年後、 食料は数カ月ももちそうにない。そんな困難な状況から彼はどう…

2015年鑑賞映画総括

『ジュラシック・ワールド』『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』 そして『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』。 今年は何かとビッグタイトルの多い年であったと思う。僕自身はといえば、私事が忙しくて見逃した映画も多い年だったが、 それでもピ…

「動き」の絵筆で線を引け――スタジオコロリド『台風のノルダ』『陽なたのアオシグレ』評

新鋭アニメ制作者による短編二本を同時上映。前者は劇場作品初デビューの監督作、後者は同作スタッフ過去作の再上映である。『台風のノルダ』は学園祭前日の高校が舞台のSFジュブナイル。台風に閉じこめられた学校で少年が謎の少女と出会う。その筋立ては…

その商業的センスに恐れ入ったよ――『お化け屋敷列伝/戦慄迷宮MAX』評

富士急ハイランドにある日本最大級のお化け屋敷「戦慄迷宮」。その恐怖演出が最大限まで引き上げられたMAX版に挑戦する人々の姿を記録した本作。はーん。要は遊園地とのタイアップ企画ね……と侮るなかれ。これがまた生半可な邦画ドラマよりもよっぽど「劇…

2D映画時代における3D表現について――アルフレッド・ヒッチコック『裏窓』メモ

アルフレッド・ヒッチコックの『ダイヤルMを廻せ!』(一九五四)は、犯人を描写の主軸とする「倒叙形式」のサスペンスであり、またヒッチコック唯一の3D映画である。だがその出来は模範的な印象に留まるものだ。対して、2D映画ながらエポックを画した…

泥の絵画、「糞」の透視図法――アレクセイ・ゲルマン『神々のたそがれ』評

昨年公開の海洋ドキュメンタリー映画『リヴァイアサン』は、その撮影にGoProカメラが用いられたことで記憶に新しい。GoProとはウェアラブルカメラのブランドであり、超小型で軽量なことから様々なシチュエーションに利用されている。同作の監督はそのカメラ…

ジミー・グラルトンの歩んだ自由の道――『ジミー、野を駆ける伝説』感想

一九三二年内戦後のアイルランド。農民達がある小さなホールを村に再建した。そのリーダーとなった実在の人物ジミー・グラルトンを描く本作は、生の歓び溢れる自由への賛歌である。 緑いっぱいの丘陵を農民達は馬車に揺られてやってくる。農具を握ったその手…

恋と怒りを闘志の糧に−−武正晴『百円の恋』評

三十二歳ひきこもり女が人生やり直しをかけボクシングに挑戦する本作。主人公・一子のバイト先である百円ショップは救いがたい人だらけだ。おしゃべりで下心丸出しの中年バイト、廃棄弁当を持ち去る陰謀論者のオバサン、いつも愚痴と悪態を撒き散らす店長。…

2014年鑑賞映画総括

今年もやります。過去分はコチラ↓ 2012年鑑賞映画総括 - タケイブログ 2013年鑑賞映画総括 - タケイブログ■映画鑑賞本数&私的総合ベスト10まずは本数から。新作 123本 旧作 58本 合計 181本※新作……2014年に日本劇場公開作(ビデオスルーを含む) ※旧作……「新…

動きが刻む生の軌跡――『抱きしめたいー真実の物語ー』評

過去の交通事故が原因で半身麻痺と記憶障害を患うつかさと、網走でタクシー運転手をしている雅己の日々を綴る本作。その冒頭、雅己が知り合ったばかりのつかさをタクシーに乗せるくだりが印象的だ。雅己はタクシーのドアを開けると、つかさを抱きかかえて座…

『NO』感想

一九八八年チリ、独裁政権の信任を問う国民投票が行われ、民主化を求める政権反対派が勝利した。その決め手となったのは、投票日までの 27日間、毎日15分だけ放送されたPR映像だ。わずかな放送枠の中で広告マン達がとった戦略とは? 本作は実話を元に賛成…

折り合いの付けるための「ハ」――『フランシス・ハ』感想

ルームメイトが恋人と同棲を始め、アパートを出ることになったフランシス。住居なし、定職なし、二十七歳未婚のモダンダンサー志望。本作はそんな彼女の日々をコメディタッチながらもリアルに綴る。冒頭、親友のソフィーとの「喧嘩ごっこ」は本当に楽しそう…

吹き荒ぶ娯楽の竜巻――『イントゥ・ザ・ストーム』感想

積乱雲から垂れる漏斗雲、その先端が下方へと伸びていき、やがて大地に触れる。それは渦巻く風となって、稲光を走らせ、電柱をなぎ倒し、木々を巻き上げ、屋根を引き剥がし、車を吹き飛ばしながら進んで行く。竜巻の猛威を描く本作ではこのように凄まじい破…

鬼才・園子温監督もDJとしては二流である――『TOKYO TRIBE』評

トーキョー各区を牛耳る徒党(トライブ)。その抗争を描く本作は世界初の「バトル・ラップ・ミュージカル」である。現代版『ウエストサイド物語』であるかと思いきや、『マッドマックス2』『時計じかけのオレンジ』『キル・ビル』の要素もある怪作だ。何より…

カメラが世界に投げ込まれる時――『リヴァイアサン』感想

漁船が舞台のドキュメンタリーである本作がいささか特殊なのは、何よりもその「不明瞭」さにある。映画は暗闇からやってくる。軋み、さざめき、泡立つようにいくつかの音が鳴り、時折何かが映り込んでは消えていく。やがて粒子の荒い画面に、錆びついた鎖の…

『テロ,ライブ』感想

終盤、爆破されて倒壊寸前のビルに取り残されたキャスターのヨンファ。メディアからも警察からも完全に孤立無援となった彼は、機材を復旧してひとりテレビ中継を再開する。そしてカメラに向かってこう述べる。「犯人は私が殺す」と。それまでの巧みに組み立…

人間の條件、猿の條件――『猿の惑星:新世紀(ライジング)』感想

かの名作へと連なる新シリーズ二作目。前作同様、CGとモーション・キャプチャーによる猿達の一挙手一投足から目を離せない。映画は人類衰退の経緯を説明した後、シーザー率いる猿達の狩りから始まる。彼らは身振り手振りで意志疎通を行い、片手の槍で勢い…

『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』感想

「大人になりきれない大人」に突きつけるべき問いはただ一つ。お前は大人になりたいのか、それとも子供のままでいたいのか、である。未来へ踏み出すにせよ過去にすがり続けるにせよ、いったん自分の現状を直視してはじめて彼の選択は切実さを帯びる。カタル…

『アクト・オブ・キリング』感想

「虐殺を行った当人に虐殺を演じさせる」この奇抜なドキュメンタリーは、劇映画的な画と編集を随所に織り交ぜながら、虐殺の当事者であるアンワル・コンゴを軽薄な罪人としてキャラ立てする。そして彼はやがて罪悪感を抱き始めることになる。しかしながら、…

雪と歌と白々しさと――『北のカナリアたち』評

「家族がほしかった」と、たどたどしく、搾り出すように語る信人の姿が痛ましい。恵まれない環境に育ち、吃音症を抱える彼は、生き難さというものを一身に抱え込んだ存在だ。しかし彼の切実さにこの映画は実のところ何も応えていない。 たとえば中盤で存在が…

コールソンが集めた八人目のヒーロー――『アベンジャーズ』評

たとえばキャプテン・アメリカの場合。彼の登場は生身での鍛錬シーンに始まり、出動時には市民を盾で守りながら参上する。そこには使命感に満ちた戦士の姿がある。 あるいはハルクの場合。この怒れる怪物は、その巨躯で空母を内部からぶち壊していく。だが彼…