タケイブログ

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2014-01-01から1年間の記事一覧

2014年鑑賞映画総括

今年もやります。過去分はコチラ↓ 2012年鑑賞映画総括 - タケイブログ 2013年鑑賞映画総括 - タケイブログ■映画鑑賞本数&私的総合ベスト10まずは本数から。新作 123本 旧作 58本 合計 181本※新作……2014年に日本劇場公開作(ビデオスルーを含む) ※旧作……「新…

動きが刻む生の軌跡――『抱きしめたいー真実の物語ー』評

過去の交通事故が原因で半身麻痺と記憶障害を患うつかさと、網走でタクシー運転手をしている雅己の日々を綴る本作。その冒頭、雅己が知り合ったばかりのつかさをタクシーに乗せるくだりが印象的だ。雅己はタクシーのドアを開けると、つかさを抱きかかえて座…

『NO』感想

一九八八年チリ、独裁政権の信任を問う国民投票が行われ、民主化を求める政権反対派が勝利した。その決め手となったのは、投票日までの 27日間、毎日15分だけ放送されたPR映像だ。わずかな放送枠の中で広告マン達がとった戦略とは? 本作は実話を元に賛成…

折り合いの付けるための「ハ」――『フランシス・ハ』感想

ルームメイトが恋人と同棲を始め、アパートを出ることになったフランシス。住居なし、定職なし、二十七歳未婚のモダンダンサー志望。本作はそんな彼女の日々をコメディタッチながらもリアルに綴る。冒頭、親友のソフィーとの「喧嘩ごっこ」は本当に楽しそう…

吹き荒ぶ娯楽の竜巻――『イントゥ・ザ・ストーム』感想

積乱雲から垂れる漏斗雲、その先端が下方へと伸びていき、やがて大地に触れる。それは渦巻く風となって、稲光を走らせ、電柱をなぎ倒し、木々を巻き上げ、屋根を引き剥がし、車を吹き飛ばしながら進んで行く。竜巻の猛威を描く本作ではこのように凄まじい破…

鬼才・園子温監督もDJとしては二流である――『TOKYO TRIBE』評

トーキョー各区を牛耳る徒党(トライブ)。その抗争を描く本作は世界初の「バトル・ラップ・ミュージカル」である。現代版『ウエストサイド物語』であるかと思いきや、『マッドマックス2』『時計じかけのオレンジ』『キル・ビル』の要素もある怪作だ。何より…

カメラが世界に投げ込まれる時――『リヴァイアサン』感想

漁船が舞台のドキュメンタリーである本作がいささか特殊なのは、何よりもその「不明瞭」さにある。映画は暗闇からやってくる。軋み、さざめき、泡立つようにいくつかの音が鳴り、時折何かが映り込んでは消えていく。やがて粒子の荒い画面に、錆びついた鎖の…

『テロ,ライブ』感想

終盤、爆破されて倒壊寸前のビルに取り残されたキャスターのヨンファ。メディアからも警察からも完全に孤立無援となった彼は、機材を復旧してひとりテレビ中継を再開する。そしてカメラに向かってこう述べる。「犯人は私が殺す」と。それまでの巧みに組み立…

人間の條件、猿の條件――『猿の惑星:新世紀(ライジング)』感想

かの名作へと連なる新シリーズ二作目。前作同様、CGとモーション・キャプチャーによる猿達の一挙手一投足から目を離せない。映画は人類衰退の経緯を説明した後、シーザー率いる猿達の狩りから始まる。彼らは身振り手振りで意志疎通を行い、片手の槍で勢い…

『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』感想

「大人になりきれない大人」に突きつけるべき問いはただ一つ。お前は大人になりたいのか、それとも子供のままでいたいのか、である。未来へ踏み出すにせよ過去にすがり続けるにせよ、いったん自分の現状を直視してはじめて彼の選択は切実さを帯びる。カタル…

『アクト・オブ・キリング』感想

「虐殺を行った当人に虐殺を演じさせる」この奇抜なドキュメンタリーは、劇映画的な画と編集を随所に織り交ぜながら、虐殺の当事者であるアンワル・コンゴを軽薄な罪人としてキャラ立てする。そして彼はやがて罪悪感を抱き始めることになる。しかしながら、…

雪と歌と白々しさと――『北のカナリアたち』評

「家族がほしかった」と、たどたどしく、搾り出すように語る信人の姿が痛ましい。恵まれない環境に育ち、吃音症を抱える彼は、生き難さというものを一身に抱え込んだ存在だ。しかし彼の切実さにこの映画は実のところ何も応えていない。 たとえば中盤で存在が…

コールソンが集めた八人目のヒーロー――『アベンジャーズ』評

たとえばキャプテン・アメリカの場合。彼の登場は生身での鍛錬シーンに始まり、出動時には市民を盾で守りながら参上する。そこには使命感に満ちた戦士の姿がある。 あるいはハルクの場合。この怒れる怪物は、その巨躯で空母を内部からぶち壊していく。だが彼…

おおかみこどもは「アニメ」の嘘をつく――『おおかみこどもの雨と雪』評

雪山の銀世界を駆ける子どもたち。かと思えば、その姿はたちまち狼と化していく。母親は彼らを追って転げ回り、倒れ込んだ先で二人をぐっと抱き寄せる。 三人は屈託のない笑顔で笑い合う。 狼人間の雨と雪、それに彼らの母親である人間の花。風変わりな家族…

「映画」を目の前に立ち上げるために−−『CUT』評

映画についての映画である。 だが古びた教養主義を掲げ、映画の堕落に嘆息するようなシネフィルのお説教映画ではない。だとすればこうも力強い映画とはなり得なかっただろう。 もっとも秀二はそう見られかねない人物である。拡声器を片手に街頭で「映画は売…

「音の粒」という音楽のありよう――『楽隊のうさぎ』評

第一に、演奏。チューバが轟き、トランペットが高鳴り、クラリネットが踊る。吹奏楽部が題材の本作にはパート練習の場面が多く、さまざまな楽器が思い思いに音を奏でる。 第二に、構成。プロを目指して退部したフルート担当、コンクールに出られず涙をこぼし…

ダメ邦画について――『永遠の0』『ジャッジ!』『抱きしめたい』感想

「邦画はダメ」だと言われて久しいが、果たしてそれは本当だろうか。 映画界全般ではなく作品そのものに話を限定すれば、ここでの邦画とは主に大衆娯楽の色が濃い作品−−ベストセラー小説や漫画原作の実写映画、テレビドラマの劇場版、あるいキャストがウリの…