タケイブログ

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ギークなぼくらのオモチャ箱――アーネスト・クライン『ゲームウォーズ』上下巻感想

 ツイッターで映画化が企画されていると聞いて最近読んだこの二冊。

「オモチャ箱をひっくり返したような」という言葉がこうも相応しい作品は他にないでしょう。しかもそこに詰まっているのは、著者が青春時代に愛を注いだ80年代ポップカルチャーの数々。本作はそれらのオモチャ片手に冒険ごっこを繰り広げるトンでもない小説でした。

 超天才ゲームクリエイター・ジェームズ・ハリデーの死後、彼の遺言ビデオメッセージが公開された。その内容は彼が仮想現実<OASIS>に仕掛けたクエストを解いた者にその遺産を授けるというもの。それを機に世界中がそのゲームに熱狂し、主人公の少年もまた謎解きに明け暮れていた……というのが物語のあらすじ。何だかHUNTER×HUNTERのグリード・アイランド編とサマーウォーズを組み合わせたかのような世界にも思えます。

 しかし本作が面白いのは、仮想現実のアバターやアイテム、あるいは単なる駄話のネタとして、とにかく実在のいろんなものが登場する点にあります。スター・ウォーズマグマ大使D&Dセサミストリートモンティ・パイソン超時空要塞マクロス、ストリート・ファイター、オインゴ・ボインゴハイランダーAC/DC、アタリ800XL、……、と固有名詞を羅列すればきりがないほど。そうしたギーク知識の競い合いが公然と行われ、仮想世界にそれらの作品が再現され、ともはや何でもアリです。

 80年代生まれの自分には当然わからないものも多数。とはいえその賑やかさが楽しいし、知ってる名前に出会うと思わずニヤリとしてしまう。さらに「アレが出てこないかな」といろいろ妄想が膨み、終始ワクワクしながら読み進めました。あと仮想世界にも「裏ワザ」があったりしてファミコンスーファミ世代としては懐かしい気持ちに。世代ど真ん中の読者であればノスタルジーに浸れること間違いありません。

 でもそうでない読者もきっと楽しめるはず。なんせ本作の原題は「READY PLAYER ONE」、プレイヤーになる準備のある者を<OASIS>の世界は快く迎え入れてくれるのですから。というわけで、YouTubeウィキペディア等で逐一調べながら本書を読むのもまた一興です。