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少年少女が年相応に愛らしい――真沼靖佳『はじめての諏訪さん』感想

 

”はじめて”の自転車に、”はじめて”の留守番。ヒーローに憧れてどんな試練も乗り越えてきた山中卓は中一の春、クラスの女の子の諏訪さんから告白された。この”はじめて”出会う感情もまた試練だ、乗り越えてやる!付き合いはじめたばかり中学生男女二人の初々しい姿を描くラブコメディ。ガンガンJOKERにて連載。

ちょっと大人びた少女がガキな少年にちょっかいを出すラブコメといえば、近年では『からかい上手の高木さん』が有名だが、本作の主人公・山中くんはそうした類似のラブコメ漫画と比べても感情表現が激しい。諏訪さんの意味深な一言にはてなマークを浮かべ、どうしたらいいかとキョドりまくって滝汗を流し、心臓がドキドキと鳴り続ける(山中くん長生きできるんだろうか)。「山中くんはヒロイン」と作者も言ってる通り、諏訪さんに振り回されて慌てまくる山中くんの姿が愛らしい。

お互いに名前呼びをする、部活動を決める。二人が積み重ねる"はじめて"の経験は実に健全で微笑ましい。コミカルなシーンはラフなタッチで、花柄やトーンも使って背景効果は大げさに、それでいて間と表情が繊細に描かれる。とりわけ二人のやり取りの中、ふと諏訪さんが見せる表情は息をのむほどに綺麗だった。巻が進むにつれて、余裕に見えた諏訪さんの年相応な一面が見えてくるのも良い。二人の仲に嫉妬する諏訪さんの親友やクラスメイトなど登場人物も少しずつ増えてきて、とにかく今後の展開が楽しみである。

あくまで少女漫画の流れを汲んだものなのだと思う。大人視点から回想するノスタルジックな青春ラブコメにはない、刺さるように生き生きとした魅力が感じられるマンガだった。